『君たちはどう生きるか』初鑑賞!

同志们好,やつがです。
今日7月14日公開の宮崎駿監督『君たちはどう生きるか』…
一言で表せば「全員観るべし」。
今回は初鑑賞の素直な感想を大雑把に述べていくぞ!
「ここすきポイント」と「ギョエーな部分」で分けていくぜ。
(以下ネタバレあり感想)

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<題辞>

やってくれたぜパヤオぉ~~♡♡
ジェネリックジブリのスタジオポノックや息子ゴローニャのう○ち作品、その他多くの国内外アニメーション等々をすべて蹴散らす快作、ついに出た!!!
いや~~…まだ日本のアニメ産業は終わっちゃいなかったぜ。
(まぁ後継者いないからこの世代で終わりだろうな…)
男鹿和雄ばり(スタッフロールに居た気が…)のコッテコテ手描き背景画、没入感抜群の雰囲気づくり、精緻な人物・感情描写と巧みなショットが相まって、まるで古典名作映画を観ている気分になったぞ。
歴代宮崎駿エッセンスを凝縮した集大成、といったところ。
原作とはほぼほぼ関係ないストーリー構成だが、映画の雰囲気は児童文学そのもの…
初期ジブリの雰囲気を残しつつガッツリ大人向けに制作されたアニメ映画でした。

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<ここすきポイント>

はっきり言うが、この映画は「一見さんお断り」だ!
今までの宮崎駿(またはジブリ映画)の軌跡をDVD擦り切れるまでしゃぶり尽くした奴が観ると面白さ倍増するやつだ。
正直、精神的/年齢的に”お子ちゃま”な人・ジブリ未視聴者にはチンプンカンプンだと思う。
随所に過去ジブリネタ(セルフパロ)や昭和ヒトケタな小ネタがぶっ込まれているので、ぶっちゃけ一回きりの鑑賞で終わらせる気が無いやつだろう。
観れば観るほど無尽蔵に新発見があるタイプの「スルメ映画」だ。
監督の「俺の映画を観やがれ~~~ッッッ!!!!」という気概を感じた。

さて主人公の牧眞人くん。
物語はじめは太平洋戦争の初期(といっても本土空襲が始まってる頃)。
空襲警報で目が覚めた主人公一家。どうやら母親が療養する病院が燃えているらしいとのこと。
慌てて飛び出す父とそのあとを追う主人公……
ほんの冒頭部分だけなのに既に見事な作画!ジブリの神髄を見た。
次のシーンでは実母のいる病院を見遣る主人公の眼前、ちりちりと燃え尽きそうな紙片が飛ぶ…母の死期が間近であることを示す明確な小道具だろう。
がむしゃらに走り出す主人公には周囲が歪んで残像のように見え、音は水中のようにぼやけて聴こえる。
ようやくたどり着いた病院は焼け落ちる最中であり、眞人の願い虚しく母は焼死してしまう。

3年後、父の再婚もあり母方の屋敷へ疎開する主人公。
この時のこわばった表情で「あ、継母のこと快く思っていないぞ」と分かってしまう。流石。
既に身ごもった継母から手を触られた時の嫌そうな顔!
継母が嫌いというよりは実母のことが忘れられないようだ。
ここで一つ重要そうなのが、特に戦中(あるいは戦前から)には寡婦・寡夫が相手の親族や兄弟を引き継いで娶る/嫁ぐことが多かった点。
夫が死んだらその人の兄弟が引き継いで妻を娶る、といったようなことがわりと普通にあったのだ。
今じゃ信じられんが一昔前(田舎だともっと最近)までは当たり前であったという。
それに倣い今作でも実母の妹が継母となったわけだが、眞人からすれば叔母さんが”母親”を名乗るようなもの…「そういうもんだ」と頭で分かっていても心が追い付かない。
その時代の”常識”に心乱される子供の悲哀が表れている一幕であった。
玄関口によそよそしく離れて並べられた両名の靴のショット、当然ながらそれは二人の心理的距離を表している。

さてそんな眞人くんは疎開先の学校になんとダットサンで初登校…。
お父ちゃんに連れられたとはいえ、この時代に自家用車って金持ちかよ!(そうだけど)
自己紹介の途中から教室はざわつきっぱなし。
案の定いい感じの騒がれ方ではない。
帰りしなには「東京モン」ってことなのかいがぐり頭の地元の子たちにボコボコにされていた。
東京のボンボンってだけあって髪を伸ばしているのがまた良い対比になっている。
…とここまでは普通だが、その次の瞬間なんと「礫を持って自分自身を殴打して出血」。
待て待て待て、ドクドク出血しとるやんけ。
しかし次のシーンで解決。父から「誰にやられたんだ?」と詰問されるも「自分がコケただけ…」なんて白々しい答え。
ははあ、これで家の人は全員眞人くんの味方をするぞ。
思った通りお父さんは学校に寄付して融通を聞かせようとするし…(しかも寄付額300円!当時の海軍下っ端だと月給20~30円くらいなので軍人の年収くらいをポンと出していることになる)。
そんでこの”ウソ”が物語に大きく関わってくるんだな。

…ってな風に、個人的には冒頭部分の描写が作中最も印象的であった。
道中の紆余曲折はこんなところでチマチマ書くより直接観てもらった方がよい。
まさにジブリ映画といった感じのワクワクドキドキ冒険譚だ。
この辺は他の人の感想カキコとかに任せておく。
というか正直面白すぎて観るのに夢中で覚えてねえ。
ただ簡潔に言っておくと…「ジブリの過去作を頭に叩き込め」!!

ところで大叔父のいる異世界(便宜上「天国」とする)、庭に生えている植物がまんま聖書に出てくるソレだったな。イチジクで確信したわ。

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<ギョエーな部分>

キタアアー!ジブリ特有の棒読みアテレコォ!
ヒミ様(眞人の母の少女時代)がクッッッソ棒読みで…『ゲド戦記』のテルーを思い出した。
「誰やコイツゥ!!」と思ってスタッフロールを見れば「あいみょん」の文字が。
しかも主題歌が米津玄師ィ~~ッッ!!w
え?パヤオそういうの嫌いじゃないんや…と驚いたぜ。
正直中の人が誰とか興味ねえが…棒読みって気が散るからやめてほしいんだよな~~。
まあ宮崎駿は声優嫌いっていうからしょうがねえな!これも”味”だわな。
あと監督が宣伝しなかった理由が分かった。全然万人向けじゃねえわこれ。
往年のアニメ映画マニア向けだぜ。

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<なんちゃってデタラメ考察>

⚠宮崎駿大激怒必死のデタラメな考察もどきです!⚠
⚠筆者の脳内でこうなっているだけです!⚠

多分、あの天国は一つだけではない。
今作のそれは「その当時の日本に特化した」天国って感じで、他の時代とか国とか惑星用の天国が存在したりするんだろう。
ばあやの一人曰く例の塔は「御一新のときに空から降ってきた」とのこと。
おそらく天国は、地球上で発生する混乱を治めるために”平和を実現する”目的・使命を有した超自然的存在から派遣されてくるモンなんじゃね?と思う。
たぶんその超自然的存在は宇宙規模の”平和の監査員”みたいな感じで、ある程度の水準にある文明…色んな惑星・世界・国を監査して宇宙全体の平和を保つ役割なのかもしれない。

人類が地球を支配するようになってからというもの、平和と混乱の繰り返しは治まることがなかった。
社会の発展に伴いますます多くの混乱が生じていたことを危惧し、外界の超自然的存在は”平和を実現する”ため幾度も天国を遣わせていた。

明治維新以降、日本は民主主義を掲げて近代化を推進してきた。
例に漏れず急速な近代化に伴う社会の混乱が生じ、それを察知した超自然的存在から天国が派遣されることとなる。
しかしその後世界恐慌や凶作といった社会不安から軍部の権威が高まり、帝国主義、果ては軍国主義へ傾倒することになる。

明治から大正にかけて「列強」の名を欲しいままにしていた、他国の犠牲の上につかの間の繁栄と平和を実現していた時代。それが大叔父の世代。
大正後半から日本は激動の時代に突入する。関東大震災、十五年戦争、太平洋戦争…
眞人の実母が少女時代に訪れていたようだが(となると1920~30年代に神隠しに遇ったことになる。社会的事件が頻発した時期。)、結局彼女は後継者にはならなかった。
彼女は天国の主権者として”平和を実現する”ことはしなかった(あるいは何らかの事情でできなかった)。
年老いて先のない現主権者は騙し騙し平和を維持しようとする。
そして現れた直系の子孫たる眞人だったが…。

天国の主権者になる/ならないは、まんまその世代が享受する平和/混乱と対応しているのではないか。
明治に生きる大叔父は”平和を実現する”役に抜擢され、危ないながらも平和の実現のため奮闘していた。
社会不安が蔓延する大正・昭和初期に生きる実母はその役になれなかった。
そして終戦間近かつ激烈な戦時下に生きる眞人が後継者にならなかったことで大叔父世代の”平和の均衡”が崩れ、やがて日本は(大叔父の言うように)火の海と化す。
しかし「終戦2年後」のラストシーンで眞人に弟が生まれており、これから平和な世を生きていくであろう彼にゆくゆくは天国の主権者となる機会が訪れるのかもしれない。

大叔父の平和の実現がなぜ作中のような経過を辿ったのか。
これは平和をつかさどる積み木(積み石)と関係するように思う。
ありゃなんだ、賽の河原の石積みか?いやむしろ世界の構造を視覚的に表現したのでは?
本作の積み木は「国」または「民族」を表しているのかもしれない。
大叔父は積み木を下から上へ「積み上げた」。
蹂躙される下の積み木(=植民地)と進化論的に高みを目指して競争する上の積み木(=支配国)の構造。
大叔父の世代は社会進化論的な”積み方”しか知らなかったのだ。
眞人の来訪がパラダイム・シフトの役割を果たしたのだろう。
彼以降の世代が、あるいは他の積み方を知っているのかもしれない。
多種多様なかたちの積み木を上へ上へと積み上げるだけではいつかバランスが崩れる。
あらゆる積み木の多様性を認め、平等かつ公平に安定するような積み方をする世代が現れるまで何度でも崩壊の危機に瀕する。
大叔父が実現したものは平和ではなく小康状態なのかもしれない。

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<残ったナゾ>

この作品には頻繁に「石」がキーワードとして登場するが何を表しているのか?
本作で「鳥」にこだわった理由とは?
天国世界の死者やワラワラはどういった存在なのか?
「学んだら死ぬ」黄金の門はなんだったのか?
なぜ天国⇔現実で同一のものが異質な存在になってしまうのか?
眞人の実母が後継者ではなくヒミ様として居た理由は?(実は家父長制?)

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——とまあ色々書きなぐったが、きりがないのでいったん終わりにするぞ!
明日もう一度観に行く予定なのでちょっとつづく。

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